kindleで相方オススメの「さいはての彼女」を探していたら、一緒にこの本が紹介されていました。
紹介文を見ていたら私好みの内容でした。
早速読んでみると、とても良かったのでこの本を紹介したいと思います。
あらすじ
恋人に振られ、職業もお金も居場所もすべてを失ったエミリに救いの手をさしのべてくれたのは、10年以上連絡を取っていなかった母方の祖父だった。人間の限りない温かさと心の再生を描いた、癒しの物語。
「Amazon」より
主な登場人物
- エミリ・・・都内のレストランで働いていたが、恋人と職を失い、15年音沙汰のなかった祖父を頼り、逃げるようにして千葉の龍浦にやってくる。
- 大三・・・エミリの母方の祖父。かつては小さな鋳物工場を経営していたが、不況により工場を閉め、現在は風鈴を作りながら細々と暮らしている。
- コロ・・・大三の家で飼っている年老いた柴犬。
- 心平・・・漁師でほぼ独身の30歳。一見チャラいが明るいムードメーカー。本当は人一倍思いやりがある。
- 直斗・・・カフェのオーナーでサーフィン馬鹿。大三が作る風鈴をネットで販売している。心平の幼馴染みで同級生。
- 京香・・・直斗の家の向かいに住んでいる直斗と心平の幼馴染み。気立てが良い美人。エミリを妹のように可愛がってくれる。
- フミ・・・大三の隣人。ギョロ目で怖い雰囲気があり、変わり者で通っているがいい人。エミリを温かく見守っている。
- 鉄平・・・大三の釣り仲間。有名な作家で、彼が書く小説には大三の風鈴がよく登場する。
- 沙耶・・・エミリの元同僚。自由奔放で噂好き。本人には悪気はないらしいが、エミリにとっては煙たい存在。
- 麻衣子・・・エミリの母。エミリが10歳の時に離婚をし、子育てよりも男に走る女性。現在は東京郊外のベッドタウンで年下の彼と暮らしている。
- エミリの兄・・・高校卒業と同時にアメリカへ留学し、日本に帰らずそのまま住んでいる。兄妹の仲は良い。
感想
この物語は、プロローグはエミリ主体、エピローグは大三主体となっており、最後に大三と麻衣子の胸の内が明かされる、心温まる内容で終わります。
大三は無口で多くを語りませんが、エミリを温かく見守っており、ひとつひとつの言動に孫への愛情が感じられました。
一つ目は、理由を聞かずにエミリを家に置いてくれたこと。
二つ目は、エミリの悪い噂が街中に広がっても変わらずに接してくれたこと。
三つ目は、その噂を耳にしながらも、それを気にせず展望レストランでバイトを続け、エミリのウクレレ修理代を捻出してくれたこと。
その他にも、無償の愛が感じられるシーンが沢山ありました。
最初、2人の間には距離がありましたが、大三がエミリに「釣り」「包丁の研ぎ方」「料理」を教えていくうちに段々と距離が縮まり、最後には肩を寄せ合って料理をするようになりました。
作中で時々おばあちゃんの風鈴が鳴っていたので、もしかしたら亡くなったおばあちゃんが傍にいて、2人の距離を縮めてくれたのかもしれませんね。
ちょっとネタバレになってしまいますが、作中に出てくる小さな包丁は、麻衣子が子供の頃、父の日に大三にプレゼントしたもので、毎日研いで使っているうちに小さくなってしまったものでした。
それを東京に帰るエミリにプレゼントとして託したのは、親子の絆を取り戻してほしいという大三の親心だったと思います。
主人公はエミリなのですが、真の主人公は大三おじいちゃんだったのではないかと私は思います。
エミリが龍浦に滞在したのは夏の2か月ほどでしたが、その間に友情と人間の温かさに触れ、人として強くなって東京へ戻ったので安心しました。
私は子供はいませんが、エミリの母親くらいの年齢です。もし自分が大三の立場だったら、同じように接することができただろうか?また、自分の親が大三の立場だったらどうだったのだろうか?と、考えさせられるものがありました。
本来、エミリは人を思いやる気持ちが先に立ついい子なので、周りの気遣いに気づき、思ったよりも早く逆境から立ち直れたのではないかと思います。
この本を読んで、森沢明夫さんの他の本も読んでみたくなりました。